実際に働くときは対話の技法を活用

介護職は対人援助のスペシャリストであり、その仕事の基礎になるのが利用者とのコミュニケーションだ。介護現場では利用者とのコミュニケーションが円滑であるほど、強く太い信頼関係を築くことができるので、日々の介護もスムーズに進みやすくなる。とはいえ、介護現場の利用者は身体状況をはじめ性格や価値観など個別の事情を抱えているので、実際のコミュニケーションは容易ではないのが現状だろう。そこで介護職として身に付けると有利なのが、対話の技法である。この技法を実践することによって、利用者との信頼関係の形成を促進することが可能になる。

まず最初に紹介するのが、繰り返しの技法である。これは利用者が発した言葉を意図的に繰り返すことで、介護職の熱意や理解を示すものだ。結果的に利用者は自分が理解されたと感じ、安心感を得ることができる。同じ効果が期待できるものとしては、保障の技法も見逃せないだろう。不安を抱える利用者に対して「心配ありません大丈夫です」といった言葉をかけることで、不安や動揺を鎮めて安心感を与える。

利用者の中には自分の話すことさえ理解できていないケースもある。そんな時には要約の技法や明確化の技法を使ってみるとよいだろう。前者は利用者の話が長くなったり、逸脱しそうになった時に、介護者が部分ごとに話をまとめながら繰り返し伝え、相手に話しの内容を整理させる技法だ。後者では利用者が漠然として話せないことを、介護者が代わりに明確な内容として話すことで、対話を円滑にする技法である。ただしいずれの技法でも、介護者の押し付けにならないように、自然な会話の流れを心がけることが大切だ。